HSCって何?
HSCとは、Highly Sensitive Childという言葉の頭文字を取って作られた略語です。日本語訳にすると、ひといちばい敏感な子供、他に言い換えるなら『感受性の強い子供』という事になります。育ってきた環境や親の育て方などで、なるものではありません。障がいやレッテル貼りでもありません。
HSCは生まれ持った気質です
「敏感である」ということは、傷つきやすく、すぐ不安になるなど、マイナス面が注目される事が多々あります。しかし敏感な子は、悪い環境だけではなく、良い環境にもひといちばい敏感に影響を受けます。安心して下さい!良いことをたくさん吸収したHSCは、ひといちばい幸せな生活を送ることができますよ。
HSCの提唱者は、アメリカの心理学者であるエレイン・アーロン氏です。そのアーロン氏の著書を翻訳されたのが、子育てカウンセラーであり心療内科医である明橋大二先生です。日本では、その『ひといちばい敏感な子』という書籍を通して、徐々に世間にもこの言葉が広まっていきています。今では、たくさんのHSC関連の書籍が出版されています。
全体の割合として、5人に1人がHSCであると言われています。1クラス30人としたら、そのうち6人はHSCです。
HSCって意外と多いのね!
一般的な子育てのやり方は、敏感な子には的外れで合わない事がたくさんあります。アーロン氏は「人と違う子を育てるには、人とは違う親にならなければならない」と言っています。HSCに合った子育ての知識やスキルを身につけた、理解のある大人に育てられる事によって、HSCはその個性を輝かせ幸せになることができるのです。
4つの性質
ここで、HSCの4つの大きな特徴を紹介します。HSCにも個性がありますが、この4つはどのHSCにも当てはまるものになります。
深く考える
HSCは、脳の情報を深く処理する部位が活発です。危険はないか、失敗しないか、恥ずかしくないか、人にどうみられるかなど、ふつう子供がそこまで考えないよね?と思うところまで深く考えます。そういうことから、行動を起こすのに時間がかかったり、妙に大人びた発言をしたりします。
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過剰に刺激を受けやすい
ふつうの子が、3しか感じないような刺激であっても、HSCは100にも感じてしまうと言うことです。例えば、怒っている声に対する恐怖感だけでなく、楽しいイベントのことを思う興奮する気持ちなどにも、ひといちばい刺激を受けます。刺激を人より多く受けるので、その分とても疲れやすいです。
共感力が高く、感情の反応が強い
人の感情を読みとります。そして自分のことのように感じ、共感します。例えば、他人が怒られているところを見ると、自分が怒られているかのように傷つきます。映画やテレビでは、良くも悪くも登場人物の感情に影響されます。
非人道的なニュースを見ると、顔は凍りついて不安を煽ってしまいます。。。
些細な刺激を察知する
些細な変化に気づいたり、小さな音やかすかな匂いにも刺激を受けます。いつもと違う声のトーンや大きさから感情を察知したりもします。
パパの「ただいまー」でご機嫌度がわかるよ!すごいでしょ?
気付くきっかけとは
子育てをしていて、「通常の子育て論がなんだか当てはまらない」「他の子とちょっと違うな」「手がかかるなぁ」と思う時が、キッカケになる事が多いです。
●不登校・登校しぶり
学校に限らず、幼稚園の頃でも「行きたくない」と言う子がいます。親からすると「幼稚園って友達と遊ぶだけでしょ?」と思いがちですが、集団生活を強いられる幼稚園や学校などの場は、HSCにとってはとても刺激の多い場所で、実は無理をしている事も多いのです。大半の子が、楽しく通っている場所でも、通いづらそうにしていると、HSCかもしれません。
●癇癪・わがままがひどい
HSCは外から刺激を受けて(人の気持ちだったり騒音だったり、他の人にはストレスにならないような事にでも)ストレスをためてしまいがちです。それを安心できる家族の前では、自分を解放しようとするために、癇癪やわがままに見られてしまいます。不快を感じるセンサーが他の人とは違う事もあります。癇癪が多いなと思ったら、その直前の出来事に目を向けてみると刺激の原因がわかるかもしれません。
HSCの娘の場合、友達同士の険悪ムードを見るだけで心乱されて、家で発散していました。
●感覚が過敏
服のタグや着心地、食事の組合せ、ドライヤーの音、先生の怒る声、日常の当たり前にある場面に敏感に刺激を受けます。そんな些細なことが?と思うようなことでも気にします。
トイレのエアードライヤーの音も苦手だよー
●その他
「発達障害を診断されたり、診断はされないけれどグレーゾーンだと指摘されたりしたけれど、なんだかしっくりこない。でもなんなの?」と言って、HSCにたどり着く方もいます。
HSCかどうかを知る23のチェックリスト
HSCかどうかを判断するために、アーロンさんが作ったチェックリストがあります。「はい」に当てはまる数を数えてみてください。
- すぐにびっくりする
- 服の布地がチクチクしたり、靴下の縫い目やラベルが肌に当たったりするのを嫌がる
- 驚かされることが苦手である
- しつけは、強い罰よりも、優しい注意の方が効果がある
- 親の心をよむ
- 年齢の割に難しい言葉を使う
- いつもと違うにおいに気づく
- ユーモアのセンスがある
- 直感力に優れている
- 興奮した後はなかなか寝付けない
- 大きな変化にうまく適応できない
- たくさんのことを質問する
- 服が濡れたり、砂がついたりすると、着替えたがる
- 完璧主義である
- 誰かがつらい思いをしている事に気づく
- 静かに遊ぶことを好む
- 考えさせられる深い質問をする
- 痛みに敏感である
- うるさい場所を嫌がる
- 細かいこと(物の移動、人の外見の変化など)に気づく
- 石橋を叩いて渡る
- 人前で発表する時には、知っている人だけの方がうまくいく
- 物事を深く考える
「はい」の数が、13個以上ですと、おそらくHSCです。しかし、「はい」の数が1、2個であっても、その度合いが極端に強ければ、HSCの可能性があります。
いかがでしょうか?HSCは、病気ではないため、誰かが「あなたのお子さんはHSCです」と診断できるものではありません。一つの判断材料として、チェックリストを使用してみるといいと思います。
チェックリストがわかりにくいなぁと思う方は、「HSCあるある」をまとめたこちらの記事を読んでみてください。
具体例をたくさん書いています
発達障害との違いについて
HSCの感覚が過敏であることや一般的な子育て論が当てはまらない事から、「発達障害なのでは?」と思う方もいらっしゃるかと思います。医学的観点からの違いはこちらの記事を読んでみてください。
私も、HSCの概念を知った後でも、娘は「発達障害の可能性があるのかもしれない」と思い、発達専門外来へ通院し、医師の診察、知能検査をうけました。(結果の詳細はこちらの記事にまとめています。)結論を言うと、娘は発達障害の診断はつかなかったのですが、知能検査を受ける事で、娘の得意不得意がわかり育てていくヒントを得ました。そういう意味では、子育てに困難を感じ心配なことがあるなら、一度受診してヒントを得るのもいいと思います。
私の個人的な考えでいいますと、HSCだけにみられる特徴は「人の気持ちにすごく敏感で、刺激に対する疲れ方がひといちばいだ」という事だと思います。
しかし、HSCであっても発達障害であったとしても、基本的に育て方は似ていると思います。どちらであっても、子供のペースに合わせて支援をする、自己肯定感を育んでいく、それに違いはあまりないと思います。
まとめ
娘を育てていて、悩む事がすごく多かった時期に、HSCという概念を知り、知れば知るほど子育てが楽になったのを覚えています。なんかスッキリしなかった事が「あぁ、そうだったんだ。だからか!」「娘も私も悪くないんだ」と救われました。
HSCを育てるお母さん、お父さんが早くその気質に気づき、子育てを楽しめるといいな、と思います。そしてその為にも、HSCという言葉が、もっと世間に認知されHSCが生きやすい世の中になればいいなと思います。
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